妊娠中・産後の体はどうなっているの?
妊婦さんの場合、5ヶ月頃からおなかが大きくなってきますので、おなかを前に突き出し、背中を反るような姿勢になってきます。この姿勢は腰にもっとも負担がかかるんですね。さらに妊娠中は体重も増えますので、その重みの分、負担は増してきます。そのため、妊娠中・産後ともに最も悩まされるのが「腰痛」ということになります。
また、妊娠中に出る「リラキシン」というホルモンは、骨盤や特に恥骨の靱帯をゆるめ、骨盤を広げてお産を進めやすくする役割があります。しかし、そのホルモンの影響で、関節の靱帯もゆるんでくるわけです。そのゆるみをカバーするために、関節周辺の筋肉に力が入り、いわゆる「凝った」状態になります。通常であれば腹筋とのバランスで負担を軽減しようとしますが、妊婦さんは腹筋も弱っていますよね。
そして靱帯がゆるいままお産を迎えて、産後もすぐ赤ちゃんのお世話などで腰に負担をかけていると、筋肉がいたみ、腰痛が起こってくるのです。
どこかに痛みがあったら、妊娠中でも早めの治療をおすすめします。カイロプラクティックといえば骨をボキボキと鳴らしながら治療する……大丈夫?というイメージがあるかもしれませんが、そればかりではありませんよ。出産間近の妊婦さんを治療することもありますが、上向きに寝てもらい、体の下にブロックを置いて調整するゆるやかな「ブロック治療」などによって改善してます。
また、リラキシンの影響で恥骨のあたりが痛んだり、腱鞘炎にもなりやすいんです。家事や赤ちゃんのお世話などで手首の痛みを感じた場合は、サポーターなどを巻いて負担を軽くしてもいいですね。
ストレスと痛みについて
どんな人にも言えますが、体の正常な状態を意識するのはとても大切です。いま自分に起こっている痛みや異状の原因が分からなければ、人は不安になり、ストレスを感じます。実は、このストレスが筋肉をこわばらせ、痛みの大きな原因になるんです。
以前テレビで放送していましたが、ベルトコンベアーで流れてくる段ボール箱を、単純に左右に振り分ける作業と、箱に書いた計算問題を解きながら答えが偶数だと右、奇数なら左で振り分ける作業を行ったところ、問題を書いた場合の方が70kgも余分に腰に負担がかかっていたのだそうです。脳のストレスが筋肉に緊張を生じさせ、結果、腰痛を起こしし易くしてしまったんですね。
ひと息ついたり、気分転換することも大事です。たとえば骨盤体操などのように、万人に共通の体操などを積極的に行うのは悪いことではないですが、体のつくり骨盤のズレは人それぞれ違いますので、痛みや異常を感じたらすぐにやめましょう。そのためにも、治療院などに行って自分の体の状態を把握しておくのはとても重要ですよ。
腰痛を防ぐという視点から、妊娠中・産後は以下の点に注意しましょう。
○妊娠中は、便通のよい食事で便秘を解消し、お腹の腰への圧を下げましょう
○活動と休息のバランスを取りましょう。動きすぎも休みすぎもいけません
○産後は肥満の解消に努めましょう
腰が痛い!じゃあどこに行く?
産後、腰などに不調が出た場合、どこに行って治療してもらうかというと、整 骨院・整体・整形外科・鍼灸院・カイロプラクティックなどを思い浮かべるかも しれません。しかし、その違いを把握している人はどれくらいいるでしょうか。
(1)整骨院
「柔道整復師」という国家資格を持つ人が開いている院です。外傷、脱臼・骨折やねんざ、打撲などといったものの治療が専門で、産後の腰痛に関しては専門外と言っていいかもしれません。治療には保険が効くのが特徴です。
(2)鍼灸院
はり師・きゅう師いった国家資格が必要です。鍼灸とはそもそも、痛みを感じるセンサー(ツボ)を鍼やお灸によって刺激することで血行を促進したり痛みを軽減させるもので、この治療の仕組みは科学的にも有効であると証明されています。また、東洋医学的な「気」の流れについても重視しています。
(3)整体
民間医療の延長線上にあるもので、昔から連綿と続いてきた「経験の積み重ね」をもとに治療を行うものです。ものすごく腕のいい人もいれば、そうでない人もいるかもしれません。系統的な学問や国家資格を土台としてない分、玉石混淆と言えるかと思います。
(4)整形外科
医療行為、つまり医師が病院や診療所で行うものです。レントゲン写真などをもとに投薬や理学療法などの治療をしていきます。「骨が折れてる、変形してる」「筋肉が炎症を起こしてる」というような病理的、解剖的な異状をレントゲン画像などから発見し治療するため、さまざまなリスクを減らせるという点で安心です。しかし、妊婦さんの場合は撮影ができない、画像には現れないような原因(腰痛に関して85%位占めてます)からくる痛みを治療しにくい、という面もあります。
(5)カイロプラクティック
「関節と筋肉を正常な状態にし神経の働きを回復するための治療」のことです。患部だけでなく、患部周辺や体全体の関節や筋肉・神経のバランスをみながら治療を行います。アメリカの政府機関が急性腰痛に対して最も有効な治療であると評価しています。
1895年、アメリカ人によって作られ、現在は先進国30カ国で医療行為として法制化されています。しかし、残念ながら日本ではまだ国家資格として認められていません。その為、カイロプラクティック治療院はだれでも開けます。 病院などで医師が行う「通常医療」以外の医療的行為を「代替医療」と呼びます。薬によって、特定の部位を治療する通常医療とは異なり、概して体全体を見て負担のかからないように改善していくのが特徴ともいえます。世界保健機関(WHO)が代替医療として認めている手技は、鍼灸とカイロプラクティックだけなのです。
選び方のポイント
とはいえ、選択肢はたくさんありますので、どうやって選んでいいか分かりませんよね。口コミ? ネット? それでも迷うものです。良心的なところを選ぶために、以下のようなポイントを参考にされてください。 最終的には、体の不調が改善するのが一番大事です。どこに通ったか、周りの評判にとらわれすぎることなく、自分に合ったところを見つけてください。
(1)「治る」と言わないところ
きちんとした医療者であれば、「治る」というような表現はまず使いません、「可能性」の中での見解を述べます。「難病(癌など)が治る」「必ず治る」などはもっての他です。そういった意味で、ひとつの目安になるかと思います。
(2)モノを売りつけないところ
サプリメントや高価な寝具、治療器具などを買わなければ治療しない、あるいは売りつけてくるようなところは、販売によって利益を得るのが主目的で、治療は二の次である可能性があります。
(3)問診、検査があるところ
重大な病理の除外等の安全を期する面からもどこが悪いのかを特定するという面からも問診や検査をせずに治療などありえません。いきなり治療に入るところは、あまりお勧めできません。ただ、経験で長くやってこられ、成果を上げている方もいらっしゃいますので断言はできませんが。